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諸星大二郎短編集 彼方へ (ワイドKC)  が11月21日に発売予定。

新刊情報
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諸星大二郎短編集 彼方へ の概要

諸星大二郎の短編集が久々に発売になります。

ただ、この短編集は今から20年も昔の2004年に文庫版で出版されたものを改めてワイドコミックで出すようです。個人的には、絵の魅力がマシマシになるワイドコミックでの再販はオーケーです。

まだ詳しい情報がアナウンスされていないので収録作品を確定できませんが、一応文庫版のときの収録作品は以下の通りです。

  • 第1章「生物都市」「海の中」「天神さま」
  • 第2章「ぼくとフリオと校庭で」「ど次元世界物語」「ヨシコちゃんと首たち」「桃源記」
  • 第3章「男たちの風景」「カオカオ様が通る」「砂の巨人」

自薦短編集という形ですので、この短編集自体がこれまでに発表された作品集からの抜粋を収めたものという位置づけ。なので、実はこの短編集を読まなくとも、ほとんどの作品は他で読むことが可能です。

ただ、その元の短編集も、今となっては古本屋を時間をかけて巡るか、ネットで探すか、電子版を購入するか、割合に入手困難です。

それなので、名作と呼ばれる切れ味鋭い短編を一度にまとめて読める作品集は貴重なのです。ただ、個人的には改めて購入するのだから、数ページで良いので描き下ろしを入れてほしいですね。

諸星大二郎とは

諸星大二郎は、すでにデビュー以来54年目となる大ベテランの漫画家になります。一番最初は漫画雑誌「COM」で1970年に「ジュン子・恐喝」でデビュー。その後、いくつかの雑誌に作品を発表しますが、何と言っても諸星大二郎という名前が世間に知られたのは、1974年に初の少年ものとして描いた「生物都市」が第7回手塚賞で入選してから。

この「生物都市」の選考の際に、委員の一人である筒井康隆に他の委員から「とても無名の新人の作品と思えないが、先行するSF作品の中に類似したものがあるのでは?」という問い合わせが殺到したそうです。そのぐらい、当時としては異質で印象的なアイディアの作品で、作画も決して上手な絵ではないのですが、新人にありがちな未熟な絵という訳でもなく、独特の存在感のある個性的な絵柄で、この点も諸星の強烈な魅力になっています。

今回の「彼方へ」にも「生物都市」は収められていて、当時の衝撃を追体験するためにも出来るだけ前情報無しで読みたい一作です。

その後は、少年ジャンプで「妖怪ハンター」シリーズ、「暗黒神話」「孔子暗黒伝」を連載。さらに秋田書店のチャンピオンで「マッドメン」シリーズを不定期連載し、83年からは「月刊スーパーアクション」で「西遊妖猿伝」を連載開始します。

個人的な話ですが、私が諸星大二郎の名前を知ったのがこの「暗黒神話」で、単行本一冊程度の長さの中に日本神話に題材をとった伝奇漫画がぎゅっと凝縮されていて、少年のころに数え切れないほどに読み返したものです。数年前、現代の伝奇アクションコミックに比べると、あまりに密度が濃いので、ストーリーのプロットだけを読まされているみたいだ、という評を読んだことがあって、確かにそう解釈出来る一面もあるよな、と感心したぐらいです。

当時は乏しい小遣いで目についた諸星作品を収集して、それは今でも私の自室の本棚の一角を占めています。考えれば、私は今年還暦ですので、40年以上もの間ファンを続けてきたことになり、その間、仕事が忙しくて熱心に追いかけて居なかった時期もありますが、ネットで新刊情報を入手でき、そのまま予約出来るようになってからは、ほぼ漏れなく購入できています。

また、2020年と翌年には展覧会「デビュー50周年記念 諸星大二郎展 異界への扉」と題して全国を回りました。この展覧会はちょうどコロナの真っ只中で、北九州の時に会期が短くなったりしましたが、中断はせずに最後までできています。

私はその中で三鷹に2回、足利市に1回、見に行っています。

Wikipediaによると、今年で御年75歳。流石に活動はかなり少なくなりましたが、それでもまだ今年に入ってからも新作の短編集「諸星大二郎劇場 第5集 アリスとシェエラザード~仮面舞踏会~」を出しています。

デビュー当時の諸星大二郎は溢れんばかりの斬新なアイディアを、独特な迫力に満ちた作画で切れ味鋭い短編や異様な迫力に満ちた中長編に仕上げる作家という印象でした。ともすれば、そういうタイプはネタ切れになったり、常にアイディアを求められるギャグ漫画家のように数年で燃え尽きてしまったり、となりそうなものですが、諸星に関しては、半世紀以上もの間、ほぼコンスタントに作品を発表し続けていて、確かにマンネリ感はありますが、ファンとしてみればそのマンネリも読んでいて安心感につながるほど。

このまま、諸星が漫画家業を引退するまで付き合えそうです。

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