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諸星大二郎劇場 第5集 アリスとシェエラザード〜仮面舞踏会〜 感想

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諸星大二郎の新刊が出たので感想です。「諸星大二郎劇場」というのは、一回り大きなA5版という版型のコミックシリーズで、この「アリスとシェエラザード~仮面舞踏会~」で5巻目です。

ビッグコミック増刊号に連載中の短編シリーズで、第1集の「雨の日はお化けがいるから」が2017年の発売で、以来5巻までけっこうペースよく出ています。

当初はちょっと不思議なお話や怖い話を短編で描いた短編集だったのですが、やはり相互に関連しない短編集というのはアイディア出しが厳しいのか、次第に連作短編の形式をとることが多くなっていき、第4集の「アリスとシェエラザード」ではレギュラー登場人物のアリスとシェエラザードという2人のご令嬢がバディで主人公をつとめるようになりました。

今回の「アリスとシェエラザード~仮面舞踏会~」はその2冊目になります。

考えてみると、古代から中世・近世の中国を舞台にした怪奇幻想を描いた「諸怪志異」でも当初は各話ごとに主人公の変わる短編だったのが、次第にレギュラー主人公の五行先生(宋代の開封に暮らす道士)とその弟子の阿鬼の話が増えていき、さらには阿鬼が成長して燕見鬼という青年になって冒険譚を繰り広げる……という話になっていきます。

「アリスとシェエラザード」でも基本は怪奇ものですが、この巻ではけっこうサーベルで戦ったりしていますが、さすがに剣戟ものにはならないでしょうね。

だいたいシャーロック・ホームズが活躍していたビクトリア朝ロンドンを舞台に、けっこう良いところのお嬢様だったけど自活しなきゃならなくなって交霊術を駆使して人探しをしているアリスと、その相棒で女性ながら剣を修めたシェエラザードの2人が怪しげな冒険に巻き込まれるというのが基本パターンになります。

この巻では、さらにレギュラー悪役の絵描きの女性まで出てきて、様々な陰謀を張り巡らせるのですが、アリスたちに邪魔をされて……という展開になっています。

私は単行本派で雑誌は読まないので連載の状況を追っていないのですが、この次は黒幕の女性との戦いになりそうですね。

諸星大二郎は、今年還暦を迎える私が中学生の頃に友達に教えられて、大きな衝撃を受けた漫画家。ご存知の方も多いと思いますが、特に初期の作品は独創的で幻想的なアイディアに満ちた作風で、SFであっても伝奇ものであっても、独特な存在感に満ちた唯一無二の漫画家でした。

得てして、そういう漫画家や作家は、才能が枯れるまでの期間が短くてすぐに筆を折ってしまったりするものですが、諸星大二郎は時期によって活動が少なくなったり活発になったりという変化はあっても、半世紀以上も活動を続け、2020年から2021年に掛けては「デビュー50周年記念 諸星大二郎展 異界への扉」という巡回の展覧会を開催したほど(東京で2回、足利で1回見ました)。

そして、この令和6年という時期になっても、こうして新刊が読めるのだからなんとも言えない気分です。内容は諸星ファンなら文句は無いでしょうが、怪奇というほど読んでいて怖い、という話ではなく恐怖漫画を期待しているような読者は肩透かしを食らったと感じるかも。

でも、少なくともほぼ一生涯に渡ってファンをしてきた身としては、こうして新刊が読めるだけで特に文句は無いのです。


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