グレンタレット蒸留所は、スコットランド・パースシャー、ホッシュに位置するモルト蒸留所です。ハイランドに分類され、スコットランドの蒸留所の中でも最古の一つと言われています。
設立は1775年となっていますが、それ以前の1717年以来、イギリスに税金を払うことを避けようとする違法な蒸留所の支配下にあったと言われています。
もっとも「最古」の蒸留所という主張は、このグレンタレットの他にもボウモアやグレンアイラなどいくつかの蒸留所も主張しており、実際のところはよく分からな無い、といった処。
元々、グレンタレットはHoshとして知られており、これは足を意味するゲール語から来ています。1818年にジョン・ドラモンドがライセンスを取得。1826年にグレンタレットという名の蒸留所がホッシュ蒸留所の近くに設立され、この蒸留所は1852年ごろには閉鎖されます。
そして、1875年。蒸留所設立100周年の年にトーマススチュアートが経営権を得て、同時にグレンタレットという名前を使用する権利も得て、ホッシュ蒸留所はグレンタレット蒸留所となります。
その後1903年にミッシェルブラザーズが蒸留所を買収するも、アメリカの禁酒法のあおりを受けて生産を停止。ウイスキー倉庫としてのみ使われることになります。1929年にミッシェルブラザーズは倒産し、蒸留設備は撤去されて、穀物倉庫になってしまいます。
しかし、1957年になって、ジェームズ・ファーリーが蒸留所を購入し、再び蒸留設備を備えて、59年より生産再開します。
81年にフランスのレミーが買収、90年に有名なハイランド・ディスティラーズが買収。そのハイランド・ディスティラーズが99年にエドリントンとウィリアム・クランが共同設立した会社に買収されて、以後グレンタレットはエドリントン傘下にあります。
グレンタレットは雷鳥のアイコンで有名なブレンデッドウイスキーのフェイマスグラウスの主要な原酒供給の蒸留所となっており、蒸留所の看板にはフェイマスグラウスの雷鳥が描かれていたりと、そちらの方をアピールしているそうです。また、もう一つ、グレンタレットで忘れてはいけない動物キャラクターがネコ。
蒸留所の衛生管理が不十分だった頃、原料の大麦を狙って、それを餌にするネズミが発生することが多く、蒸留所ではネコを飼っていました。
そうしたネコはウイスキーキャットと呼ばれており、現在では設備が整って鼠害が無くなっていますが、一部の蒸留所ではウイスキーキャットをアイドル的に飼っていて、訪問客を楽しませています。
そのウイスキーキャットを世界に広めたのが、グレンタレットのタウザー。
タウザーは1963年から87年までの23年11ヶ月の間に28899匹の鼠を捕まえたという偉業でギネスブックに認定された「世界一のウイスキーキャット」で、現在は蒸留所に銅像が設置されています。
グレンタレットのタレット（Turret)の語源には諸説あり、「乾いた」を意味するゲール語Turraidとする説や埋葬を意味するTorraidhからとする説があります。
蒸留所のそばをタレット川という川が流れているのですが、このタレット川が夏の間は水位が下がり乾くことから、前者の説が生まれたようです。
原料の大麦はスコットランド国境のシンプソンズモルトから高品質のモルトを調達し、蒸留所から3.5マイルの位置にある湖やタレット川から水を確保。生産に使っています。
その麦汁を作るためのマッシュタンはスコットランドでももはや珍しい手動マッシュタンでグレンタレットのこだわりの一つとなっています。
生産能力は年間34万リットルとのことで、知名度の割りには低く、ポットスチルも2基稼働するのみで、大手資本のもとにある蒸留所としては最小の部類と言われています。
そして、そのほとんどがフェイマスグラウスに使われるため、日本では定番はなく、ごく少量が流通しているのみです。
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