Ncn’ean(ノックニーアン)蒸留所は2017年から稼働開始した、新しいスコットランドの蒸留所になります。Ncn’eanと書いて、どうやらノックニーアンと発音するようで、Neachneohainの略語だそうです。意味はゲール語でスコットランドの伝承に登場する魔女王の名前だそうです。
ノックニーアン蒸留所は、最近の蒸留所らしくオーガニックにこだわったもので、いわゆる農場型蒸留所を現代に蘇らせたもので、100%再生可能エネルギーを動力にウイスキーの蒸留をしています。
バイオマスボイラー用の木材チップは地元の森林から供給され、副産物は全て、動植物の飼料としてリサイクルされるそうです。
設計したのは、ウイスキー蒸留コンサルタントとして長く活躍して、台湾のカバラン蒸留所の立ち上げにも協力したことで有名な、故ジム・スワン博士。ほぼ晩年のしごとになりますね。
ノックニーアン蒸留所はスコットランド西海岸のドリムニンというかなり辺鄙な場所に設立されています。(最初はドリムニン蒸留所で日本に紹介されていたそうです)
この敷地はかつてマクリーン一族という領主の領地でありドリムニンハウスというお城の敷地の一部でもあったそうですが、18世紀後半にチャールズ・マクリーンが破産して土地を売却。その後、一連の所有者に不幸が続いて、1849年にはドリムニンハウス自体が焼失してしまい、牧草地になってしまいます。
そして、2012年にルイス一家がこの場所に蒸留所を建設するために土地を取得。ルイス家の娘アナベル・トーマスがそれまでロンドンでコンサルタントをしていたのですが、新たに起業したドリムニン蒸留所会社のCEOに就任すると、プロジェクトを開始。政府の援助もあって、2017年3月に蒸留所は稼働開始します。
全てバイオマス燃料を使うという点については、環境保護という面が一番ですが、それだけではなく本土にありながら、マル島からアクセスしたほうが近いぐらい交通の不便な場所で、灯油に頼るとコストがかさんでしまう、という面もあるそうです。
スコッチウイスキーの法的な条件に熟成を3年しなければならない、というものがあり、出荷は今年から。ましてやウイスキーとしてしっかりと熟成するには10年、20年の期間が必要なので、まだまだ日本市場で気軽に飲めるようになるには時間がかかる銘柄ですが、新しいスコッチウイスキーの試みとして注目の蒸留所です。
なお、さすがに素直に熟成を待っていたら、資金がショートするのでしょうか、ボタニカルスピリットを作って出荷して居ます。熟成していないウイスキーの原酒を、10種のボタニカルで再蒸留したもので、強壮剤とアンゴスチュラを添えたり、カクテルベースとして最適なものになっています。通常、こうしたウイスキーの出荷までの資金稼ぎとしてはジンを作るケースが多いのですが、このボタニカルスピリットはウイスキーとジンの中間のような存在ですね。
また熟成中の樽300本を、樽のまま早期販売もしていて、1つの樽は3000ポンドから始まって、最終的には300本以上のボトルになるそうです。こうしたものはある意味、チャレンジをしている起業家を応援するという意味合いが強く、その価格に見合うだけの品質のものができるかどうかは不明なのですが、お財布に余裕があったら、こうした樽も買ってみたいものです。