ヒンチ(HINCH)は、アイリッシュウイスキーの新顔で、北アイルランドのベルファストのすぐ南のBallyahinchという町で生まれた蒸留所になります。
このBallyahinchは島の町という意味だそうで、この最後の5文字からHINCHと名付けられたそうです。
ウイスキー蒸留所としては若い蒸留所ですが、アイルランドでナンバー1の蒸留所を目指して、建物のデザインやポットスチルを3基所有するなど、将来を見据えて様々な取り組みを行っています。
この建物は農村部の三万平方フィート(大体850坪)の蒸留所にビジターセンターが含まれていて、地元の職人によって、地元で調達された材料を使用して建設されています。
ヒンチの創設者のテリークロス博士はボルドーにワイン畑を持っており、20年以上に渡ってワインの製造を行っています。
ヒンチ蒸留所では、そのワインを熟成させた樽を使って、ウイスキーの熟成を行っていく予定になっているとのことです。
アイリッシュウイスキーは、20世紀の始めまでは世界で一番のシェアを持っていましたが、最大のマーケットであったアメリカ市場で禁酒法が施行されたのを皮切りに、そのアメリカで粗悪な密造酒にアイリッシュのラベルがはられて密売されたために評判が落ち、さらにアイルランド内戦で国力が低下したのも響きました。
禁酒法が廃止された後も、今度はアイルランド自由国の独立の報復でイングランドとその植民地からアイリッシュウイスキーが締め出しを受けて、第二次大戦では中立だったために戦場の米兵にはスコッチが配給され、戦後に米兵が母国に帰ってからもスコッチばかりを呑むようになってしまいます。
こうした不運の連続でアイリッシュウイスキーは第二次大戦後には見る影もなくなり、わずかにアイリッシュコーヒーの添え物的な扱いをされて、どうにか需要が回復するという事態になっていまいます。
現在のアイリッシュウイスキーは、そうした長い冬の時代をようやく抜けて、世界的なウイスキーブームに乗って、消費が順調に伸びています。そうした需要に応えて、一時はわずか4つにまで減った蒸留所も再び増えだしています。
このヒンチ蒸留所もそうした一つで、まだ新しい蒸留所ですが、今後の展開が楽しみです。