諸星大二郎の短編集「彼方へ」が上梓されましたので、早速購入。感想を書いていきます。
この作品集は、基本これまでに刊行された作品集の描き下ろし短編を集めたもの。諸星大二郎は1970年デビューで、世間に広く認知されたきっかけは1974年に「生物都市」でダイ7回手塚賞に入選してから。
したがって、すでにキャリアは54年目というとんでもないベテラン作家です。しかも、西遊妖猿伝のような大長編もありますが、基本的に短編や、シリーズものの連作短編が多い、という人で、幾度もいわゆる再編集ものを多く出しています。
今回の短編集は、そうした再編集を出版する際に「おまけ」として描かれた描き下ろしを集めたものになります。
なので、一作一作のページ数はかなり短めで、全部で16編も収められています。
しかも発表された時期が最後の1篇を除いて、2013年以降と「新しい」時期に描かれています(他の漫画家だと新しいなんて表現にはならないですね)。
実は私は40年以上も諸星ファンをやっていますが、ブラック企業に身も心も捧げていた一時期に多少、離れていたので、読み残した短編もあり、この手の再編集も割りと買っています。というか、すでに持っている作品集でもあまりに高価でない限りはお布施の積りで買っていました。
それで、「栞と紙魚子」の新装版の描き下ろし3篇以外はだいたい読んでいました。
さらに1篇、雑誌掲載のみの1篇「神宮千恵子のハロウィン」は未読でした。
そして、この短編集で一番の読みどころである1970年のデビュー作「ジュン子・恐喝」ですが、これは実は読んだ事がありますし、正直に言って後年の諸星大二郎の味わいがまだ生まれていない作品なので、それほどおすすめは出来ないですね。やはり諸星らしい諸星といえば「生物都市」が最初の一作になるのでしょう。
その他の描き下ろし作品は基本的に、けっこう枯れてきてからの作品になるし、ページ数は短いし、もともとがおまけだったので、正直に言って薄味。
中学時代にファンとなり、還暦の今年まで追いかけている漫画家ですし、買う前から薄味なのはわかっていたので特に不満はありませんが、何の前知識も無しにいきなりこれを読んで、紙の本で1980円となると怒る読者もいるかも知れませんね。
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