桑田次郎の「8マン」の全6巻が第1巻のみ594円とキンドル定価ですが、2巻以降が297円とお手頃価格になっています。
原作平井和正、作画桑田次郎のSFアクション漫画で、少年マガジンで1963年から65年にかけて連載。さらにアニメにもなって大ヒットした作品です。
8マンは凶悪犯の奸計にはまって射殺された刑事の東八郎の人格と記憶が科学者の谷博士の手によって、スーパーロボットの電子頭脳に移植されて警視庁捜査一課のどの捜査班にも属さない、8番目の男「8マン」として蘇り、普段は私立探偵として、事件が起きると8マンに変身して、解決のために戦うというものです。
プロットとしては、変身ヒーローものの元祖的なものであり、同時にハリウッドのロボコップの元ネタでもあり、普段は市井の私立探偵というあたりはアメコミのヒーローを想わせる部分もあります。
超音波を聞き取れる耳や、透視装置のついた眼、加速装置を持ち、原子力をエネルギー源としていて、時々オーバーヒートしそうになると、タバコ型冷却剤(強加剤)を服用するすのですが、その姿が一服ふかしているように見えるという、当時の少年漫画としてはかなり大人っぽい主人公でした。
当時、一世を風靡していた鉄腕アトムに対抗するために企画された作品で、少年マガジンの編集者がSFマガジンの福島正実に知己を得ていたことから、福島から「宇宙塵」主宰の柴野拓美を通して、同人だった平井和正を紹介された、という経緯だそうです。
平井自身は矢野轍の紹介だと述懐していますが、どちらにしても黎明期の日本SFの小世帯ながら、後のSFシーンを作り上げたビッグネームがゴロゴロ出てくるような逸話といえるでしょう。
作画の桑田次郎は、大人っぽい設定にピッタリのシャープで美麗な作画が魅力の漫画家で、50年代初期から多くの貸本向け作品を発表し、50年代後半から60年代はじめにかけては「まぼろし探偵」「月光仮面」といったヒット作も手掛け、満を持して「8マン」に取り組み、大ヒットを記録したということです。
ところが、元来精神的にちょっと不安定なところがあった人だったようで、以前から睡眠薬やナイフで自殺をはかったり、仕事と夜遊びに明け暮れて妻に逃げられたりという私生活で、8マン連載中の65年に自殺用に入手した拳銃を持っているところを逮捕され、全ての連載が打ち切り、8マンも途絶するという結果になってしまいます。
その才能を惜しんだ周囲からの手助けもあり、少年漫画の世界に復帰しますが、徐々に人気が落ちはじめ、1977年には少年漫画の世界から身を引き、今度は神秘体験を経て宗教の世界に行ってしまいます。
1989年に8マンの復刻版が50万部以上のヒットを記録。桑田作品の再評価も進み、その後は過去の作品集などが発掘されて生活の安定も得て、2004年に8マンの「決闘」というエピソードのリメイクを発表して引退。田舎で平穏な晩年を過ごして、2020年に逝去しています。
8マンの画風は今となっても、それほどの古さを感じさせず、桑田の確かな実力を感じさせます。
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