色川武大・阿佐田哲也の小説を集めた全集になります。全23巻のまとめ買いで50,600円とかなり高価な買い物になりますが、もちろんひと続きの作品ではないので、興味のある巻だけこうにゅうしてもオーケーです。
色川武大・阿佐田哲也は、昭和36年ごろから文筆業として活動をはじめ、平成元年に没していますので、やはり戦後日本の元気だった時代を太く短く生きた小説家で、どこかアウトローじみた生き方は生真面目なサラリーマンなどには憧れる部分があったのかと思います。
純文学を書くときには色川武大、麻雀小説をはじめとする娯楽小説を書く時には阿佐田哲也の筆名を使い分けていました。
色川武大は学生生活に馴染めず、浅草の興行街に通っていたり、戦時中に勤労動員で働く最中にガリ版同人誌を発行していたことが露見して無期停学になったりしていました。
戦後になると、担ぎ屋、闇屋などのアングラ職を転々として、アウトローに。後に発表した「麻雀放浪記」の主人公さながらの生活を送っていましたが、昭和28年に桃園書房に入社。編集者として活動し、その後桃園書房も馘首になって、生活のために娯楽小説を書き始め、昭和36年に賞を受賞。
小説家として本格活動し始めます。さらに昭和45年から週刊ポストで作家や芸能人などが参加する麻雀勝抜き戦の観戦記を執筆しはじめ、自分も選手として参加したりします。
しかし、小説家としての活動を始める時期からいわゆるナルコレプシーに悩まされるようになって、昭和49年ごろからそれが悪化し、さらに昭和51年には胆石の悪化で危篤になるほど。
闘病しながらも、色川武大と阿佐田哲也の両方で執筆し続け、多くの著作を発表。昭和53年には直木賞も受賞し、世評も上がるのですが、平成元年に引っ越したばかりの一関市で心筋梗塞で倒れ死亡。
アウトロー生活は戦後の一時期で抜け出したのですが、やはりどこか放埒な生き方をしていて、太く短くの印象がある人です。
全23巻というかなり膨大なものですが、第1巻が色川武大の「狂人日記」「怪しい来客簿」、2巻が完全版の「麻雀放浪記」の2冊が白眉。
さらに第5巻が「ドサ健ばくち地獄」「新麻雀放浪記」も欲しいところ。
それ以外の巻も、ファンなら欲しいところでしょうが、まあ面白い小説だけ読みたいという人なら、これぐらい購入しておけば、かなり満足できそうです。
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