開高健は、戦後の一時期に活躍した小説家で、昭和5年生まれで平成元年に没しているので、戦後の昭和の時代を象徴しています。
「パニック」「裸の王様」「輝ける闇」などの文学作品に加え、趣味の釣りについてのエッセイ「フィッシュ・オン」「オーパ!」なども人気です。
戦後に旧制高校から大阪市立大学に入学し、作家を志し、1951年には処女長編小説を私家版として友人間に配ったりと文学活動を開始。町工場で働きながら、壽屋(サントリー)に務める同人仲間と結婚し、54年には夫人が代謝するのに従い、後任として壽屋宣伝部に中途入社し、コピーライターとして、ウイスキーのキャッチコピーを手掛けています。
サントリーといえば、赤玉ポートワインの大正11年の宣伝に本邦初のヌードポスターを採用するなど、古くから宣伝には力を入れている会社ですが、中でもウイスキーブームの時に多くの名CM、キャッチコピーを世に出しています。その中で開高健が関わったものとしてとはトリスの「人間らしくやりたいナ」が有名。
その後、作家として独り立ちし、1958年には「裸の王様」で芥川賞を受賞。1964年には朝日新聞社の特派員として戦時下のベトナムに赴き、反政府ゲリラに襲われて、総勢200名のうち生存者17名という大被害を生き抜いて、どうにか死地を脱して帰国。
週刊朝日に「ベトナム戦記」を発表し、さらに1968年にはこの体験を元にした「輝ける闇」を発表。「夏の闇」「花終わる闇」とともに三部作になります。
こうした苛烈な体験と並行して、趣味の釣りでも1970年からエッセイの「フィッシュ・オン」の連載を開始し、日本の他ブラジルのアマゾン川など世界中を釣行して、その成果を描いています。
食通でもあり、食や酒に関するエッセイも多く、このあたりの豪快さも戦後日本の作家、文化人といった感じがします。
89年に58歳で没していますが、太く短く、といった生き方をした人、というのが個人的な開高健の印象でしょうか。今ではあまり読まれていない小説家エッセイストかも知れませんが、オジサン世代にとっては懐かしい作家です。
この電子全集全20巻では第1巻がベトナム戦争三部作で、2巻が初期の純文学の中で評価の高い作品、3巻が釣りエッセイ集……という感じで、正直熱心なファンで網羅したいのでは無ければ、とりあえずこの3冊とあとは有名な「オーパ」などが収められた14巻、15巻あたりを購入すれば十分に満足できそうです。
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