「新世界より」は、貴志祐介のSF大作。第29回日本SF大賞受賞作になります。
1000年後の日本を舞台に、普通に超能力が使えるようになった人類が自然に囲まれた中で育つ主人公達の物語になります。一見、牧歌的で穏やかな展開ですが、どこか不穏な雰囲気が漂う日常が描かれていきます。
主人公の少女は、上巻ぐらいでは仲間たちと育っていく様子が描かれていますが、それを通して徐々にこの世界の秘密が明かされていきます。
そして、第二部とも言える主人公が大人になってからの大きな災厄が本番。相当に長い序盤の少女時代を通してじっくりと伏線を張り巡らせていたのですが、それがこの大きな災厄を通して回収されていき、この世界の真実が浮かび上がっていくという構成です。
貴志祐介はおチラかと言うとホラー、ミステリ分野の作家で、サイコパスが登場する作品が多く、人間の欲望や狂気が恐怖を呼び起こすといった展開が得意で、どちらかと言うと露悪的な作品が多いかな、という印象があります。
「新世界より」は、ドボルザークの交響曲第9番「新世界より」にタイトルが由来しているそうで、どこか牧歌的な雰囲気がタイトルに合っています。
2012年にTVアニメにもなっていて、キャッチコピーの「偽りの神に抗え」は有名です。2クール25話に渡って放映され、後半に行くに従って緊迫感がまして盛り上がっていくのですが、とにかく前半が何をやっているのかよく判らない上に地味で盛り上がらないため、アニメファンには評価されているのですが、なかなか一般の知名度は高くなっていません。
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