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「拳神 海渡勇次郎伝」 壮絶な描写が胸を打つ作品です。

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拳神 海渡勇次郎伝」は小池一夫原作、松森正作画の劇画作品です。小池作品としては知名度はイマイチなのが惜しいところ。

作品の内容は、日本ボクシング界の黎明期にボクシングの魅力に憑かれて、活躍した海渡勇次郎の一代記になります。捕鯨の村に生まれ育った勇次郎は、捕鯨銛打ちの技術を学ぶために、アラスカ北部に留学し、ボクシングに出会い、サンフランシスコに渡ってリングに立って……という展開です。

日米開戦の前の時代背景で、白人による東洋人、そして黒人の差別が酷く、ボクシングのリングでも白人に勝つことを禁じられて苦しみながら戦っていく姿は胸を打ちます。

特に素晴らしいのが松森正の作画。海渡勇次郎の顔立ちは紛れもない東洋人、日本人なのですが、その独特な存在感、悲壮な表情は素晴らしいものがあります。

ただ、サンフランシスコを旅立って日本に帰国してからは、なんだか話が迷走し始めて、さらにもう一度アメリカに渡る経緯についてはもはや……。そこで終了しますが、まあ打ち切りだろうなあ、というのがまるわかりです。

この作品の人気がそこまで上がらなかったのは、その迷走ぶりの所為なのでしょうが、前半部分の壮絶でありながら、血と汗と泥の中に鈍く輝く美しさに満ちた物語は小池劇画でも最高の成果です。

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